今日はちょっと真面目な話題です。
最近、SNSやYouTubeのショート動画で「ヤバい法案が衆議院で可決された」「これで会社に従業員の病歴や受診履歴がバレるようになる」みたいな投稿が流れてきました。ひろゆきさんが解説している動画もあって、わりと拡散されているみたいです。
お仕事柄、健康保険や個人情報まわりのニュースは追うようにしているので、「え、そんな法律が通ったの?」と気になって調べてみました。
結論から言うと、ちょっと話が盛られています。
順番に整理してみます。
そもそも何の法案の話?
話題になっているのは「個人情報保護法」の改正案です。
2026年5月26日に衆議院で可決され、いまの国会で成立する見込み、という段階のものです。
この改正のなかに「病歴などの“要配慮個人情報”を、本人の同意なしで使えるようにする」という項目があって、そこが「ヤバい」と取り上げられています。
「会社に受診履歴がバレる」ってホント?
ここが一番の誤解ポイントなのですが、結論を言うと会社が従業員ひとりひとりの受診履歴を見られるようになる、という話ではありません。
動画では「あなたこの薬を飲んでるから、この病気なんじゃないの?って言われちゃうかもしれない」みたいな言い方をしていますが、これは法律の中身そのものというより、“最悪の想像”を膨らませた表現です。実際の改正は、もっと限定的なんです。
実際に変わるのはここ
- 同意なしでできるのは、ざっくり「①個人データを“統計づくり”のために第三者へ渡す」か、「②ネット上などで“すでに公開されている”病歴などの情報を取得する」といった行為で、しかも統計の作成やAIの学習・開発の目的に限定されています。「どんな病歴でも自由に使えるようになる」わけではありません。
- 個人を特定する使い方はNG。「誰が何の病気か」を名指しで扱うものではありません。
- 人事や採用などの目的は対象外。会社が従業員を評価するために使う、という建て付けではありません。
- 使う側は目的を事前に公表し、書面の契約を結ぶ必要があり、目的外の利用や再提供は禁止です。
ちなみに、よく一緒に話題になる「課徴金」は、この特例専用のペナルティではありません。
今回の改正全体で新しく入る制度で、悪質な違反で個人の権利利益を害した場合などに、違反で得た利益相当額を納めさせる、というものです。
つまり「みんなの病歴データを“個人が分からない形で”まとめて統計やAIに使う」という話であって、「会社があなた個人のカルテを覗ける」というのとは、まったく意味合いが違うわけです。
健診結果やマイナ保険証とごっちゃになりがち
ここがややこしいので補足しておきます。
- 健康診断の結果は、もともと会社が把握できます(労働安全衛生法で決まっています)。ただしこれは“健診の結果”であって、“受診履歴”ではありません。
- マイナ保険証で過去の薬や受診歴が共有されるのは病院どうしの間だけで、しかも受付で本人が「はい」と同意したときだけです。勤務先には渡りません。
この辺りが頭の中で混ざると、「会社が全部見られるんだ」という不安に育ちやすいのかな、と思います。
じゃあ動画は全部デマ?
いや、そうとも言い切れないのが難しいところです。
「病歴などの機微な情報を本人同意なしで使えるようにする」という方向性自体は本当にあって、日弁連(日本弁護士連合会)も懸念を表明しています。プライバシーの観点で、議論すべき論点があるのは事実です。
ただ、それを「会社に個人の病歴がバレて言われる」というところまで膨らませると、さすがに飛躍しすぎ、というのが私の感想です。
動画のほうも「〜かもしれない」と可能性の話にしてあって、断定はしていないんですよね。そういう“逃げ道”のある言い方になっています。
思うこと
こういう「ヤバい法案!」系の話は、不安をあおる切り取りほどよく伸びます。
でも実際は「核には本当の論点があるけど、結論は盛られている」というパターンがほとんどです。
大事なのは、「全部ウソ」でも「動画の言う通り」でもなく、“何がどこまで本当なのか”を自分で一段だけ確認することかなと思います。
今回でいえば、「統計・AI目的に限定/個人特定はNG/会社が個人の受診履歴を見る話ではない」あたりを押さえておけば十分です。
もし「これってどうなんだろう?」と自分だけでは判断しづらいことがあれば、気軽にLINEで聞いてもらってもいいですよ。こちらも完璧な答えを出せるわけではないですが、個人的な見解くらいはお伝えできると思います。
ただ、このディーノ企画のLINEは私がゆるく見ているだけなので、どうしても返信が遅くなりがちです。
なので、退職や、今回のような法令・制度まわりのお話でしたら、私が運営している「未来退職」のLINEのほうへご連絡いただくのがおすすめです。
こちらは常にチェックしているので、より詳しく・早めにお答えできると思います。
…と、たまにはお仕事っぽい真面目な話でした。